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「できない」ではなく、「こうしてみてはどうだろう?」 ~自分に合った答えを見出す力

2024年09月22日 | コラム

私が子ども達と関わる上で、とても大切にしていることがあります。それは、子ども達が自分の頭で考え、答えを出せるような環境づくり、サポートをすることです。本記事では、子どもが自分で考え行動し成功した例を紹介します。

私が以前働いていたEarly Learning Centreと呼ばれる園は、5歳クラスのほとんどの子ども達が、併設されている小学校0年生の半日クラスに行くという珍しいタイプの園でした。0年生のグループは午前・午後と分かれていて、半日の学校以外は園で過ごしていました。

(カナダの幼児教育の種類については、こちらの記事をお読みください。)

5歳にして忙しいスケジュールをこなす子ども達ですが、朝早く園に着き、ごはんを食べてから登校する午前のグループはとくに、時間の余裕もあまりなく、毎日ビックリするほど慌ただしい。

当時0年生の朝の集合場所は外だったので、冬-40度まで冷え込むこの土地では、たったの5分間外に出るのにも万全な装備が不可欠。スノーパンツ、ブーツ、フリース、ジャケット、帽子、手袋、ネックウォーマー。外に出るだけでも一仕事。全て自分でできますが、とにかく時間がかかるのです。しかも、色々着ているうちに暑くなってくるので居心地も悪い。

時間の制約もあり、準備の多さに苦労する子ども達も何人かいました。

冬の子どもの服装の例

そこで、私は子ども達と朝集まってこの状況について話合いの場を設けました。

「いつも時間がないけど、学校に遅れるって思ったら怖い」

「学校はお昼から始まればいいんじゃない?」

「私は時間あるから全然平気。」

「手袋を履くのが一番難しくて、時間がかかるんだ」

グループは6人ほどの少人数ですが、意見はそれぞれ。少なくとも半数くらいは、朝の時間がストレスになっているようでした。

園内のみの場合、子ども達のニーズやリクエストに応じてルールやスケジュールを変えることは柔軟にできたのですが、学校の開始時間や外に出る際の装備など、変えられない部分があるのももちろん事実。私はそのことを子ども達に伝えたうえで、どうすれば余裕をもった朝を過ごせるか、問いかけてみました。

「(ジャケットや手袋など)全て着たままはどうだろうか」

「床が泥だらけになるから、靴は履き替えなきゃいけないね」

「どうやって手を洗う?」

「手袋は脱いだほうがいいんじゃない?ばい菌ついてるし」

「暑くなったらどうしよう?」

「暑かったら窓を開けてもらうことってできる?」

「ごはんの後に廊下に行くまで少し時間あるから、スノーパンツだけ履いていけば、あとで着るものが少なくて簡単だ」

私がそばで見守るなか、子ども達からどんどん案が出されていきます。飽きてきて会話が終わるのかな、という気も初めはしましたが、私が思った以上に子ども達は真剣に解決策を話し合っていたので、朝の準備時間が大きなストレスになっていたことを今一度感じました。

私は、子ども達がアイディアを出し合ったのももちろんですが、誰も「解決策をひとつだけに絞ろうとしなかったこと」にも感動しました。約半数は朝の準備にストレスを感じていなかったにも関わらず、誰ひとりその場を去ることなく、最後まで話し合いに参加していたのです。

一通り話し合ったあとに、子ども達がお互いを尊敬し、思いやりをもって話し合えたことを褒め、こう伝えました。

「暑くなったら窓を少し開けられるし、スノーパンツを教室に持ってきたければ持って来るのももちろん良いよ。自分にどの方法が1番合うか考えて、自分で決めてね。何も持ってきたくない子はもちろん何も持ってこなくて良いよ。」

それ以降子どもたちは毎朝登園した際、ロッカーの前で何を教室に持っていくか考えて行動するようになりました。それから朝は相変わらず忙しかったのですが、子ども達の顔から自信が覗くことも多くなりました。

ここでの幼児教育者の役目ってなんでしょう。毎朝時間が無くなるのを知りながら、「急いで!」ということ?全て自分が代わってしてしまうこと?

でも、もし誰かが全力疾走するあなたに向かって、

「電車に遅れるからもっと速く走りなさい!」

と言って来たら、はい!と返事をして速く走りますか?

「もうこれ以上走れないよ!」と思うでしょう。

誰かが駅まで送ってくれるかもしれません。でも、毎日そうではいけないのも事実。

それと同じです、子どもたちも。

行動の先には、目的があります。そして大人はその目的に沿って行動を調整しますよね。走りたくないから早めに家を出て歩く人、毎朝駅まで走るのが気にならない人、最短で駅に着きたいから徒競走の練習をする人(笑)、駅に時間通りにつくという目標を達成できれば、どれも正しいですよね。

それと一緒で、私は子どもたちが壁に当たった時、「自分に合った答えはなにか」を考えられるようになってほしいと思っています。

「どうしたら学校に遅れず、冬服を着られるか」

という単純で、きっと子ども達もすぐ忘れてしまうようなことでも、自分で答えを導き出せたこと、それによってついた自信は、その後の人生に必ず影響があると思います。

今書いたのはたったの一例ですが、私は保育士の役目とは、

「ひとつの答えに縛られず、ものごとを柔軟に考え、時には道を照らしてあげること」

だと思っています。

人間なら誰しも、得意不得意があります。苦手を克服できたことが大きな自信に繋がる場合もありますが、私は苦手なことは最低限できるようにしておけば、苦手なままでも良いと思っています。それよりも、得意なことに目を向けて伸ばすことが大切です。

子ども達が大人になる過程で経験する集団生活では、速く動けたり、成績が良かったり、人に従えたり、一目でわかりやすいことや物差しで測りやすいことが評価されます。でも、人生はそればかりではありません。道はひとつじゃないから、壁に当たった時、諦めてほしくないのです。

「もうダメだ」「できない」ではなく、「じゃあこうしてはどうだろうか?」「こうはできないか?」と、自分の答えを導きだせる人になってほしいと思いながら、日々子ども達と向き合っています。

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